取材 ・テキスト
宮崎 敦(山形支局長)
repo.1 YC山形中央
〝 伝統と地域の信頼を引き継ぐ決意 〟
2023年3月
読売センター(YC)山形中央は山形市の中心部、アズ七日町南側の本町商店街にある。創業から88年、伝統の販売店を2022年10月に引き継いだのが所長の伊藤一也さんだ。山形県内YC27店をまとめる所長の中でも一番若い、32歳の初々しい新人所長。伝統店の看板を背負う重責を感じながら、日々奮闘している。
◇天童で販売店修業を積む
伊藤さんは高校卒業後、ガソリンスタンドなどいくつかの仕事を経験した後、YC天童の仕事を紹介された。「やってみようかな」。新聞配達から始まり、個別に家を回っての集金、広告の折り込み、お客様の管理など、新聞販売店の仕事の経験を少しずつ積んだ。天童では店長を任されるまでになった。
「朝は毎日1時15分頃に店に出て、到着した朝刊にチラシの折り込みなどを行ってから配達に行きました。早い時は2時頃に出発し5時半頃までかかります。昼は午後2時頃から7時頃まで仕事していました」
――大変なお仕事ですね。
「最初はつらい思いもしました。でも22歳と若かったこともあって、集金で訪問した天童のお客様にかわいがってもらいました。『結婚したんだって』と声をかけてくださったり、農家の方からお野菜をもらったり。それと高校の同級生に負けたくないという気持ちがあり、仕事を続けることができました」
昨年9月、自分を育ててくれた水戸孝博・YC天童所長と、東京本社の販売局社員から、YC山形中央の所長就任を依頼された。
◇老舗店を引き継ぐ
山形の老舗販売店であるYC山形中央は、先代所長の松川泰典さんが引退するまで、松川家が代々所長を務めた。「読売の松川さん」と言えば本町・七日町界隈では有名で、お客様だけでなく、商店街など地元の人との信頼関係は厚い。伊藤さんが4代目で初めて松川家以外の所長になり、年齢も山形で一番若くなった。
「まさか自分がYC山形中央とは。お話を聞いた時は、驚きしかありませんでした。2週間後には所長に就任しましたが、歴史あるお店の看板を継ぎ、あまりに責任の重さが違うと感じました。幸い近隣市のYC所長に販売研修などを一緒に受けた若手の仲間がいて、いろいろ教えてもらいながらがんばってきました」
◇お客様一人ひとりを大切に
YC山形中央が担当するエリアは、主にJR奥羽線より東側の市中心部で、読売新聞と日本経済新聞を併せて3000件以上に配達している。扱う部数は県内トップクラスで、店には営業社員2人、事務スタッフ2人、パートの配達員が約25人勤めている。配達員の年齢は20代~80代までと、幅広い。
「年末に日経新聞を購読しているお客様から、丁寧なお礼のお手紙をいただきました。こちらは『配達して当たり前』という気持ちだったので、お客様からお礼状をもらうのは本当にうれしかったです。配達数が多くても、お客様一人ひとりから見れば、毎日一つの新聞です。だから一人ひとりのお客様を大切にしたい」
―― 伊藤さんは、どんなYCにしたいですか。
「お店のスタッフが、やりがいのある仕事ができるようにしたい。売り上げを確保し
ながら、従業員の方に『YCで働けてよかった』と思える店作りをめざします」
「松川さんは地域密着、地域の方に支持される販売店をめざしていました。年齢的に未熟で、私に強みはありませんが、まずは所長自らお客様1件1件を訪問し、ごあいさつをしたいと考えています。人生経験は浅いですが、多くの声を聞き、いい販売店をめざします。そして新聞を毎日、お客様に届けさせていただきたい」
お店の看板も23年2月に新調した。伊藤さんは、YC山形中央の伝統と地域の信頼を大事に引き継ぎながら、山形市のYCに新しい歴史を作ろうとしている。